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庭造りを始める前に

 私たちは庭造りの専門家ではないので、素材として使われる樹木の生産者として植物の性質、特性について、いくらかの知識を持ち合わせているにすぎません。そうした立場からみると、昨今のガーデニングについて、見た目の美しさや人間の都合を優先させ、植物の悲鳴に耳を傾けていない園芸書や園芸評論さえあるような気がします。庭造りを始める前、植物を扱う前に基本的なことについてご理解いただければ思います。


■植物は生きている

 当たり前と思われるでしょうが、以外とそれを意識しないで過酷な環境を強いていないでしょうか。デザイン重視の過密プランター、商業主義優先の庭園施工がその例です。たとえばガーデニングコンテストやイベント会場の修景緑化では今日の審査、明日会場オープンに間に合わせることが目的で、3年後の状態を考えている余裕はありません。完成時の状態が大切なので我慢することにします。

 ところがこの考え方を一般の庭造りの中に持ち込んでいる場合が良くあるのです。業者にたのんだところ、狭い敷地に、最もらしくウッドデッキやラティスフェンスを設置し、シャラの株立ちの周りに彩りよく外来種を植え込み、残ったスペースに草花を詰め込んでイングリッシュガーデンの出来上がり、とのこと。数日後、請求書を見てびっくり。これから先は、ただ草取りなどの管理作業に追われ、過密になった樹木や草花をどうしたらよいのが途方に暮れる日々を過ごすことになります。そのうちにウッドデッキの床が歪んだり、穴があく始末・・・。

■見えている部分とそうでない部分とのバランスが大切

 いいかえると植物地上部の葉の総量と根の総量とのバランスということです。ただし、ここでは根といっても水分や養分を吸い上げることのできる根をいいます。種をまいて苗を育てるとよくわかりますが、最初は自分の居場所を造り、体を固定するために根が出ます。水分しか吸収できないので、種の中に蓄えられている養分で成長するのが一般的です。いかに根が大切かを物語る本能的な営みですね。

 なにかの理由で根が切られると成長が緩慢になったり停止します。条件が悪いと弱って枯れることもあります。先ほどのバランスが崩れたからです。従ってこれとは逆に地上部を芽摘み、芽欠きや剪定などで小さくすると、根の発育が緩慢になりますが、その代表的な例が盆栽ではないでしょうか。

ポット苗は万能か

 鉢やビニールポットの苗木は、植え付けの際に根を切らずにすむので適期以外のときでも活着、成育に支障をきたさないとされています。ただしすべてがうまくいくとは限りません。

1)過保護に育てられたポット苗
 ビニールハウスや本州などの温暖なところで、十分な水と肥培管理の元に育てられた苗は、植え付けられた場所との落差が大きく適応できずに弱る場合があります。

2)根が過密になったポット苗
 販売適期をすぎるとルーピングといって行き場のなくなった根がポットの内周部分で、とぐろを巻いたように延び、水抜きの穴から出てきます。こうした苗をそのまま植え込むと新しい根が出づらく、成育に影響します。このような場合は植え付ける前に根の部分を解したり、古い部分を切除して発根を促します。

3)「にわか」ポット苗
 ポットのなかで養成したのではなく、出荷の時に間に合わせ的にポットに詰めた苗のことをいいます。見てくれや取り扱い重視をするあまり、入りきらないとの理由で根を極限まで切りつめているのですから、よいわけがありません。根さえ乾かなければ「ふるい根」
*のほうが活着がよいくらいです。

(注)*「ふるい根」・・・根鉢部分の土をふるい落とした苗のこと。業界では開葉前または落葉後の落葉樹で小さいものはこの状態で植え付けることが多い。活動の停止した早春、常緑性針葉樹(マツ、トウヒ類)も同様で、道内だけでも年間何十万本以上植え付けられている植林用苗木のほとんどはこれです。

移植(植え替え)の適期

 苗木を植え付けたり、植え替えたいのだがいつ頃がよいかという質問をよく受けます。北海道の場合は一般的に、落葉樹は早春(4〜5月)の落葉期または晩秋(10〜11月)の葉に色づく頃ないし落葉期とされていますが、厳密に言うと最適期は種類によって若干異なるようです。常緑樹は早春から開葉期前までとお盆明け(8月下旬〜9月中旬)とされています。

 前者はなるほどと理解できますが、後者のお盆明けはどうしてなのでしょうか。この時期が最良というのではなく10月以降よりは活着する確率が高いということなのです。常緑樹は当然のこと冬でも葉を付けているので、翌年の春まで葉からは少しずつ水分が出ていきます(蒸散します)。一方、根は植え替えによって切られており、時期的には地温が低くなっていることから発根しません。したがって水分を吸い上げることができず徐々に脱水状態になりやすいのです。つまり先ほどのバランスが崩れているからです。

 針葉樹の葉は広葉樹のようにすぐに葉がしおれないので、管理が疎かになりやすく、脱水して葉の色があせてきたときはすでに手遅れです。春先まで青々していたのに、暖かくなってきた6月にイチイの葉が色抜けしたように白っぽくなってきた話をよく聞きますが、このような事情に起因するのです。単に寒さで痛んだり枯れたりする場合は、葉が赤茶けてきます。



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