創造主の選択
THE IMMORTALITY OPTION
J. P. ホーガン
東京創元社
ISBN4-488-66320-6 C0197 \800E
前作「創造主の掟」より十年あまりを経て出版された続編。元々一作完結の予定だったが読者や周辺からの根強いリクエストで執筆されたもので、続編の構想をにおわすインタビュー記事からさらに数年を経てやっと世に出たと巻末の解説に在ります。
土星の衛星タイタンでの世にも不可思議な一大機械文明。その製造能力を生かし、地球側の言い成りに従属させようとする勢力に対抗し前作に引き続き孤高奮闘する主人公とそのグループ。前作において背景説明されていたタイタンの機械文明を生み出した異星人が時の流れを超えて今よみがえる・・・、と言ってもこの異星人遥か昔に滅亡しているのですが、「星を継ぐ者」三部作でやったような実体を伴ったものじゃないんですね。少し前の「内なる宇宙」で登場したような情報生命体としてですが、少し違うのは生体から抽出したオリジナルが在る人格として存在すると言うところでしょうか。如何なる経緯でそこに出現したのかと、異星文明の社会背景などについてもかなりのページを割いて説明しています。その他にも他の作品でも見られるような人格を乗せた人工知能としての存在も登場し、物語の後半の牽引力となります。機械文明にしても本来は資源の探査、製造、本拠地への輸送を行う自己増殖する自動機械、工場の一群だったのがアクシデントにより突然変異を経て独自の意識を持つ個体の集まりとなり、それが文明へと発展したものとして書かれています。中世ヨーロッパ、ルネッサンス期のイタリアをモデルにしていて宗教色の濃い描写がされています。後半の山場にはモーゼの川くだりなんて言うのも登場します。
そう言えばメタンとアンモニアの氷の衛星タイタン、「星を継ぐ者」シリーズでも舞台として登場しますね。土星や木星はその余りにすざましい環境故物語の舞台にはなりにくいですが、衛星と入っても惑星サイズです。環境はやはりすざましいですが、重力などは余りかけ離れていないので人工的な環境を作れば居住可能でしょうし、地球からも遠すぎず近すぎずでここを舞台とした作品は他の著者でも結構多いようですね。
なんと言っても異境の地に加えてさらに二つの異世界があります。前作と別々に読んでも大丈夫な構成になっていますが、とっても読み応えがありますよぉ。SFですが、舞台が地球外ということと最先端のコンピュータや通信関係の用語概念を別にすれば普通の人にも十分すすめられる内容です。